ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
母が作ったビーフシチューは、いつもながら美味しかった。お肉は適度に柔らかく、シチューはコクがあってスパイシーで、うっとりするほど美味しい。


「やっぱりお母さんのビーフシチューは最高だわ」

「そう? ありがとう」

「相当難しいのかしら……」

「作り方の事? だったら、そうでもないわよ?」

「そうなの?」

「ええ。何なら教えてあげましょうか?」

「うん、ぜひ! 明日いいかな?」

「いいわわよ」

「やったー!」


これを覚えたら、それを口実に新藤さんのお宅に行こうっと……


「おいおい。という事は、ビーフシチューが二日続くのか?」


テレビを観ながらご飯を食べていた父が、不満そうに口を挟んできた。顔が赤いのは、お酒で酔っているのか、はたまた釣りで焼けたためなのか……


「そのぐらい協力してください」

「協力? 誰に、どんなだ?」

「そりゃあ、莉那の花嫁修業のよ?」

「ちょ、お母さん……」

「何だと? と言うことは、莉那は竹宮君とヨリを戻したのか?」

「えっ?」

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