ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
父の口から思いもよらない人の名前が飛び出した。竹宮さんは、一言で言えば私の元カレだ。


竹宮さんはある大手の商社マンで、本当は私の担当ではないのだけど、たまたまピンチヒッターで行った時に知り合い、半年ほどお付き合いをした。

歳は私より八つ上で、基本真面目で律儀な人で、私とお付き合いするにあたっては私の両親にご挨拶したいと言い、だから父も母も彼の事を知っていた。

しかも、父は生保に勤めているのだけど、竹宮さんの商社は大のお得意様との事で、時々顔を合わせる事があったとか、なかったとか……


「違うわよね?」


すかさずそう言ったのは母だ。母は新藤さんの事を知っているから当然の反応だ。


「う、うん。第一、あの人はアメリカに行ったきりのはずだし……」


そう。お付き合いを始めて半年ほど経った頃、突如竹宮さんはアメリカへ転勤する事になったのだ。期間は未定で。


それを機に、私達のお付き合いは終わってしまった。初めは彼からメールが1〜2度来たような記憶はあるけど、やがてそれも無くなり自然消滅した。

元々、竹宮さんからのお誘いで付き合い出し、私は正直それほどではなかったので、当然な成り行きだったと思う。


名前がいきなり飛び出して驚きはしたものの、私の中では完全に過去の人、だったのだけど……


「いや、彼は日本に帰国しているよ」

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