ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
午後、私はある事を言うために新藤さんに声を掛けた。
「仕事の話かな?」
「い、いいえ。プライベートな事です」
「そうか。じゃあ、お茶でも飲もうか?」
という事で、私達は社内の喫茶室へ行き、二人ともホットコーヒーを頼んだ。それをお互いに一口啜り、
「どんな話かな?」
と言って新藤さんは真剣な目で私を見つめた。
「すみません。そんな大層な話ではないんです」
「そう?」
「はい。実はこの間の日曜に、母からお料理を教わったんです」
「ほお……」
「それでその……よろしかったら今夜お邪魔して、夕ご飯を作らせていただく、なんてどうかなと思いまして……」
話はそれだった。つまり、母から教わったビーフシチューを、今夜新藤さんのお宅で作ってみようと思う。週末まで待ったのは、休みの前日の方がゆっくりお邪魔出来るから、という姑息な計算からだ。
新藤さんに正面から見つめられ、ちょっとばかり緊張してしまったけど、新藤さんに断わられるという事は全く想定していなかった。むしろ頭の中では、材料の買い出しから実際にお料理するまでが、しっかりとイメージ出来ていた。ところが、
「なるほど。それはありがたいんだが……」
と言ったきり、新藤さんは難しそうな顔で黙り込んでしまった。
「仕事の話かな?」
「い、いいえ。プライベートな事です」
「そうか。じゃあ、お茶でも飲もうか?」
という事で、私達は社内の喫茶室へ行き、二人ともホットコーヒーを頼んだ。それをお互いに一口啜り、
「どんな話かな?」
と言って新藤さんは真剣な目で私を見つめた。
「すみません。そんな大層な話ではないんです」
「そう?」
「はい。実はこの間の日曜に、母からお料理を教わったんです」
「ほお……」
「それでその……よろしかったら今夜お邪魔して、夕ご飯を作らせていただく、なんてどうかなと思いまして……」
話はそれだった。つまり、母から教わったビーフシチューを、今夜新藤さんのお宅で作ってみようと思う。週末まで待ったのは、休みの前日の方がゆっくりお邪魔出来るから、という姑息な計算からだ。
新藤さんに正面から見つめられ、ちょっとばかり緊張してしまったけど、新藤さんに断わられるという事は全く想定していなかった。むしろ頭の中では、材料の買い出しから実際にお料理するまでが、しっかりとイメージ出来ていた。ところが、
「なるほど。それはありがたいんだが……」
と言ったきり、新藤さんは難しそうな顔で黙り込んでしまった。