ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
あ。でも待って。もしかして、またあのパターンかもしれない。ただ聞いてみただけという……


「もしかして、また聞いてみただけですか?」

「ん? ああ、あの時は悪かったね? でも今日は違うんだ。一緒に食事でもどうかなと思って……」

「そうですか。でも……」


あのパターンではなかったようだけど、浮かれてる場合ではない事に私は気付いた。

おそらく新藤さんは先週末の事を気にしてくれたのだと思う。それで今夜は美沙さんに断わり、私をお招きしてくれてるのだと……


嬉しい反面、そんな気を使わせてしまった事が心苦しいし、そもそもそれに見合った美味しい夕ご飯を作る自信が私にはない。ビーフシチューのレシピはどこかへ行ってしまったし。

そんな私の葛藤を見透かしたように、


「家に帰るんじゃないんだ」

と新藤さんは言った。でも、意味が分からない。まみちゃんがいるのに、家に帰らずに食事をするって、あり得るのかな?


「今夜はお得意様の接待で遅くなるって、美沙さんに嘘をついたんだ」

「え?」


それは全くの意外だった。超がつくほど真面目そうな新藤さんが、嘘をつくなんて……

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