ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
「すまない。君を泣かせたくないのだが、僕は……」

「言わないでください。分かってますから」


好きだけど、その感情を受け入れられない。新藤さんはそう言いたかったのだと思うけど、それを言ってほしくなかった。言葉にする事で、決意がより固くなってしまいそうだから。


「もっと早く君に出会いたかったよ」


新藤さんはそう呟き、私も一瞬同じ事を思った。でも……


「それはダメです」

「え?」

「それでは、まみちゃんが生まれていませんから。そんなの、可哀想です」

「…………」

「過去を振り返っても仕方ないと思います。大切なのは、今と、これからの未来だと思います」

「楠君……?」

「すみません。偉そうに……」

「……いや、そんな事はないよ。そうだな、君の言う通りかもしれない」


新藤さんは、そう言うとフッと微笑んだ。

生意気にも説教じみた事を言ってしまったけど、新藤さんに伝わったかしら。私の意図、というか、願いが……

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