ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
私達は近くの喫茶店へ入った。


「竹宮さん、どうして美沙さんがあの女性だと判ったんですか?」


私はコーヒーをオーダーすると、すぐに竹宮さんにそう尋ねた。


「それはね、ひとつには君の知り合いだって事。偶然にしては出来過ぎだからね。そして決定的だったのは、僕が彼女を振り向いて見たら、彼女は僕を見て満足そうにニヤッと笑ったんだ。何も関係ない初対面の相手にする態度じゃないだろ?」

「ああ、確かにそうですね。でも……」

「ちょっと待って」


美沙さんは何のために、そしてなぜ竹宮さんの事を知っていたのか。その疑問を竹宮さんに聞こうとしたのだけど、それを彼に遮られてしまった。


「その前に聞きたいんだけど、あの上司さんと君の関係は?」

「関係ですか? 関係というほどの事は……」

「単なる上司と部下、ではないよね?」

「それは、その……」

「正直に話してくれないかな?」

「わかりました。私はあの人が好きです。あの人もそうだって、言ってくれました」

「ふうー、やっぱりそうか。僕はてっきり、君にはまだ好きな人はいないと思ったんだけどね……」


竹宮さんは、さも気落ちしたかのように肩を落とした。


「え? どうしてですか?」

「今日みたいな日に、すんなり僕と会ってくれたからさ……」

「今日みたいな日、ですか?」

「そう。だって、今日はクリスマスイブだからね」

「あっ……」


そうだった。すっかり忘れてた。と言っても、ここ数年ずっと気にしてなかったのだけど。

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