ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
次の日。私は大胆にも新藤さんを昼食に誘った。昨夜の事を彼に説明するために。


ここは会社の近くにあるお寿司屋さん。ネタが新鮮でシャリは適度な大きさで、お昼としては少し贅沢だからそうちょくちょくは来れないけど、私のお気に入りのお店の一つだ。


「うん、美味しいね……」


新藤さんは、本マグロの握りをパクリと頬張ると、感心したようにそう言った。


「私、ここのお寿司が大好きなんです」

「なるほど。僕も好きになったよ」


え? なんか、ドキドキしちゃう。お寿司の話をしてるのに、私が言われた気になっちゃう……

なんて、呑気にしてる場合じゃないわね。


「あの、昨夜の事なんですけど……」

「ん?」

「私が一緒にいた人は、その……なんて言うか……」


ああ、言いにくい。というか言いたくない。でも、言わなくちゃ……


「以前に、お付き合いしていた人なんです」

「あ、そう」

「二年ぐらい前に、ほんの半年だけ……」

「そうか」

「あの人とはキッパリお別れしてたんです。昨夜お会いしたのは……」

「美沙さんの策略だろ?」

「……えっ?」


それを私は言おうとしたのに、なんと新藤さんから先に言われてしまった。

美沙さんの策略である事を、たぶん新藤さんは簡単には信じてくれないだろうけど、そこは根気強く説明し、何がなんでも信じてもらおう。そう思っていたのだけど……

< 164 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop