ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
私は新藤さんのお顔をジーッと見た後、愉快になってクスッと笑ってしまった。なぜなら、新藤さんはバツが悪そうに顔を赤らめていて、そんな新藤さんを見るのは初めてだし、何よりも新藤さんの本心が今ので分かったと思うから。


「な、何が可笑しいんだ?」

「だって……ウフフ」

「笑うな」

「すみません。今私が言ったのは、嘘ですからね?」

「え?」

「竹宮さんとよりを戻すなんて事、全然考えてませんから」

「そ、そうか」

「当たり前じゃないですか……。あ、本当に時間がなくなっちゃう。急いで食べなくちゃ」

「そうだな。そして早くここを出よう?」


新藤さんは周りにチラッと目をやり、やはりバツが悪そうにそう言った。周囲に目立ってしまってかっこ悪いから、早くこのお店を出たい、という事だと思う。


「そうですね。でも、私のせいじゃないですからね?」

「分かってる」


新藤さんはフッと苦笑いを顔に浮かべ、残りのお寿司に取り掛かった。


竹宮さんの件は、平然と私に復縁を勧める新藤さんへの怒りと、一方では、いわゆる“鎌をかけた”つもりだったのだけど、まさか新藤さんがあそこまで分かりやすい反応をするとは思っていなかった。

あれは……そう、たぶんヤキモチだと思う。

私はそれが嬉しくて嬉しくて、その後もしばらくは頬が緩みっぱなしだった。

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