ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
まだ日が落ちきる前に、私は麻生さんのお宅に着いた。


「まあ、莉那さん……!」


麻生さんは、私を見ると目を丸くして驚いていた。


「すみませんね、お呼びたてしちゃって……」

「いいえ、とんでもありません。それで、まみちゃんの具合は……?」

「大丈夫だと思いますよ。あなたが来てくれたから……」

「え?」


それって、どういう事だろう……


「さ、どうぞお入りになって?」

「あ、はい……」


私は靴を脱いで上がらせていただき、麻生さんに続いた。すると、フローリングの床の、やや広い部屋に行き、まず目に入ったのは積み木で遊んでいるらしい男の子だった。たぶんまみちゃんと同い年ぐらいだと思う。


「まみちゃん。今日は莉那ちゃんがお迎えに来てくれたわよ? 良かったわね?」


麻生さんが言い、その方向に目をやると、部屋の隅で背中を丸めた女の子が目に映った。まみちゃんだ。


「まみちゃん、こんにちは」


と、私はまみちゃんに向かって声を掛けたのだけど、まみちゃんはお返事はおろか、何も反応してくれなかった。

聞こえなかったのかな。そう思ってもう一度声を掛けようとしたら、


「向こうでお話しましょう?」


と麻生さんに言われてしまった。


「あ、はい。でも、まみちゃんが……」

「説明しますから。ね?」

「わかりました」


私はまみちゃんが心配ではあったけれど、麻生さんと共にその部屋から離れた。


てっきりまみちゃんは高熱とかで寝ているとばかり思っていたけど、そうではなかった。では、いったいまみちゃんに何があったんだろうか……

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