ママと呼ばれたい ～素敵上司の悲しすぎる過去～

一つには、今日が初めてということ」

「はあ……」


と言われても、正直私にはピンと来なかった。何事にも最初はあるわけで、なぜそれが問題なのだろう。


「今までは一度もないのよ。まみちゃんは、ずっと我慢していたのだと思うの。寂しくても、悲しくても」

「それは私も思ってました。まみちゃんはいい子過ぎるんじゃないかと……」

「そうなのよ。さすが莉那さんね。よく解ってらっしゃるわ」

「そんな事ありません。私なんか……」

「いえいえ、大したものよ？ 子どもがいい子だと親は安心してしまいがちだけど、それは大人の都合なのよね。子どもは元来そうじゃないの。わがままを言ったり、時には癇癪を起こすものなのよ。でもまみちゃんには全然それがなかった。今までは」

「という事は、まみちゃんもようやく子どもらしくなった、という事ではないですか？」


私は思わず明るい声を出していた。我ながら、鋭い解釈だと思ったから。ところが……


「そう思えれば良いのだけど、私は違うと思うのよ」


と、麻生さんに否定されてしまった。