ママと呼ばれたい ～素敵上司の悲しすぎる過去～

すると新藤さんは、そっと私の肩に手を触れた。“分かってるから”って意味だと思う。


「申し訳ないが、あなたにはまみへの愛情が感じられない」

「な、何を言ってるんですか？ そんなわけないでしょ？ あの子は私の姪なのよ？ 可愛いに決まってるじゃないですか……」

「…………」

「あ、分かった。あの人に言われたのね？ 麻生さんに。あの方は私を誤解してるみたいなのよね」

「確かに麻生さんから話は聞きました。帰りに寄って来たので」


え？

という事は、私の“ママになりました”宣言も、麻生さんから聞いて新藤さんはもう知ってるってこと？

うわあ、恥ずかしい……


「しかし僕は前から気付いていました。そしてあなたと話し合うべきだと思っていました。それを早くしなかったのは僕の落ち度だし、今やそんな悠長な場合ではないと気付きました」

「な、何を言ってるのか分かりませんわ。でも話し合うのは構いませんよ？ 今からそうしましょうよ？」

「いいえ。今も言ったように、話し合う余地はないと思います。あなたとは距離を置くのが、僕らにとってもですが、あなたにとっても良いと思いますよ？」

「なんでそうなるのよ？ あ、分かった。あなたはこの女と再婚したいんでしょ？ だから私が邪魔になったんだわ。こんな家事もろくに出来ない女の、どこがいいのよ？」


私が家事を出来ないのはその通りで、それについては耳が痛いけれども……

美沙さんの表情と口調が少し変わった気がする。それに論点も。

今の言い方だと、まるで新藤さんと美沙さんが男と女の関係だったように聞こえるけど、まさかね……