ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
その後は二人とも黙々とご飯を食べ、私はライスを少し残してしまったけど、それを下げてもらって食後のコーヒーをいただいている。


「ところで、君は結婚は……?」


不意に新藤さんがそう私に訊いてくれた。


「してません。ちなみに付き合ってる人もいません」


私はここぞとばかりに即答し、恋人がいない事も新藤さんに告げた。「ああ、そう?」と言って新藤さんは顔に苦笑いを浮かべたけど、私は気にしない。だって、大事な事だから。


「まさか、“仕事が恋人です”なんて言わないよね?」

「まさか……。いい人がいないだけです」

「ほお。どんな男なら君にとって“いい人”なのかな?」

「そうですね……」


思わず“新藤さんみたいな人です”と言いそうになったけど、もちろんそれは言わなかった。


「私よりも年上で、仕事ができて、逞しくて、男らしい人がいいです」


正に新藤さんなんだけど、気付いてくれるかしら。と少し期待したのだけど、


「ああ、そうなんだ……」


新藤さんは気のない返事しかくれなかった。もう少し押しちゃおうかな。

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