ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
よかった……新藤さんの家で。もし違う人の家だったら大変だったわ。今も大変は大変だけども。


「あの、おはようございます」


とにかく私は新藤さんにご挨拶をした。新藤さんは上下グレーのスウェット姿で、袖捲りしてテーブルに朝食を配膳していた。

アットホームで、職場での彼とはかなり印象が違う。


「やあ、大丈夫かい?」

「あ、はい。頭痛はしますけど、何とか……」

「昨夜はちょっとばかり飲み過ぎたようだね?」

「申し訳ありません……」


うう、カッコ悪いよ……。でも新藤さんは怒ってはいないみたいで、逆にニコッと微笑んでくれた。


「良く効く薬があるから飲むといいよ。ちょっと待って」


そう言って新藤さんはキッチンの方へ歩いて行った。


「すみませーん」


ふと見れば、テーブルにはさっきの女の子が子ども用の椅子にちょこんと座り、ニコニコしながらキラキラした瞳で私を見ている。


やはりこの子は新藤さんの娘さんなのだろう。でも、見たところお母さん、つまり新藤さんの奥さんのお姿はない。そもそも、新藤さんは“妻はいない”と言ってたしなあ……


という事は……どういう事なんだろう。

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