ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
「苦いけど胃のむかつきはこれで治まるはずだよ」


キッチンから戻った新藤さんは、そう言いながら私にドリンクみたいな小瓶を差し出した。液状の胃薬だと思う。


「それと、手を出してごらん?」

「あ、はい」


私が言う通りに手を差し出すと、新藤さんは私の手を取り、手の平に数粒の白い錠剤を乗せた。


「これは頭痛薬とビタミン剤。まとめて一気に飲んで」

「はい。ありがとございます」


新藤さんに小瓶のキャップを開けてもらい、錠剤を口に放り込むと液状の胃薬と共に喉に流し込んだ。途端に口の中で薬特有の嫌な臭いと味がしたけど、薬なのだからと我慢して飲み込んだ。


ぐえー、不味い……


「おねえちゃん、ぽんぽんいたいの?」


女の子が心配そうに私に聞いてくれたのだけど、“ぽんぽん”って? ああ、お腹の事ね。


「お腹じゃなくて、頭が痛いの」

「あたま? どのへん?」

「ん……この辺かな」


私は自分のこめかみを指でグリグリとやった。


「ふーん。パパにチューしてもらえばすぐなおるよ?」

「えっと……そう?」


じゃあ……ってわけに行くわけもなく、私と新藤さんは一瞬顔を見合せ、互いに苦笑いを顔に浮かべた。

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