ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
普段なら美味しくいただけるんだけど……


「ごめんなさい。ちょっと無理そうです」


無理に食べたら吐いちゃうような気がする。


「だろうね。でも、何かお腹に入れた方がいいよ。ジュースぐらいなら飲めるだろ?」

「あ、はい。でもその前に顔を洗ったりしたいんですけど……」

「ああ、そうだよね。確か新しい歯ブラシがあったような……。まみ、いい子で食べてなさい」

「はーい」


新藤さんは私を洗面所に案内してくれた。


「まみちゃんっていい子ですね?」

「そう、だね。ちょっといい子過ぎるけどね」

「え?」


“いい子過ぎる”ってどういう事だろう。新藤さんは一瞬暗い顔をしたようだけど、どうして?


「それにとっても可愛いです」

「そうかい? ありがとう。えーと、確かここに……おお、あったあった」


新藤さんは棚からまだ開封していない歯ブラシを出してくれた。それは赤い色の明らかに大人用の歯ブラシで、本来それを使うのは……奥さんだったはず。

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