ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
「この人は僕の会社の部下で、昨夜は遅くなったので家に泊まってもらったんですよ」

「……あ、ああ、そうですか」


私はその女性にペコッとお辞儀をしながら、新藤さんったら正直に言うのね、と驚いていた。


新藤さんはまみちゃんを下に降ろし、


「今日は早く帰ってくるからね」


と言った。それを聞いた瞬間、新藤さんが毎日定時で帰るわけを私は知った。もっと早く気付いても良さそうなものだけど。それに対してまみちゃんは、


「くっく」


と言った。“くっく”? 何のこと?

私はボーっとしていたのだけど、まみちゃんが私の手元を指差してもう一度「くっく」と言ったので、ようやく私は気が付いた。靴の事なのだと。


「あ、ごめんなさい。ここに置くわね?」


私は手に持っていたまみちゃんの赤い靴を玄関の床に置いた。

ふうー。私も幼児言葉を勉強しないとダメかなあ。


「では、まみをよろしくお願いします」

「はい。行ってらっしゃい」

「まみ、いい子でな?」

「うん、バイバイ」


私もまみちゃんに「バイバイ」と言って手を振ったら、


「りなちゃん、またきてね?」


と、まみちゃんは言ってくれて、思わず私は、


「うん、また来るね!」


と返事をしていた。

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