ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
ここ数年、広告部はずっとピンチが続いている。出版業界全体の不調に、世の中の不景気が重なったためだ。

つまり雑誌が売れず、従って製作部数が落ち、広告媒体としての価値は下がる一方。そこへ来て不景気のため、クライアントは広告を出し渋る。

政権与党が変わり、景気回復の兆しがあると言われているけど、今のところこの状況に変化があるようには思えない。

広告の受注が足りず、かと言ってページに穴を開けるわけには行かないので、無料で掲載する広告がたくさんある。それらはもちろん売上にはならず、手間は普通に掛かるのだからピンチにならないわけがない。


何か打開策はないものかと、広告部のみんなも、社長室も、もちろん私も日々考えてはいるのだけど、これと言ったものが見つからない。唯一活路が見出せそうなWeb広告も、肝心のWeb化した雑誌が読まれないのではどうしようもない。

インターネットの普及で、世の中には情報が溢れている。書籍も苦戦はしているけれど、特に雑誌は瀕死の状態と言ってよいのではなかろうか。


そんな八方塞がりな広告部だけど、“ミスター日電”なら何とかしてくれるのではないだろうか。いや、きっとしてくれるに違いない。


そう私は期待した。まだ見ぬその人に……

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