ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
「その後?」

「はい……」

「その後ね……」


と新藤さんが言ったところで駅に着いてしまい、会話は一時中断。スイカで改札を通り、ホームに上るとちょうど電車が来たのでそれに乗り込んだ。

その電車はいつも私が乗っている電車と同じ路線で方向が逆。私の家と新藤さんの家は、会社を挟んでちょうど真逆の位置関係だ。


車内は結構混んでいて、新藤さんと並んで吊革に掴まれただけでもラッキーと思えるぐらい。当然ながら近くに他の人がいるわけで、さっきの話は続けにくい。ちょうど微妙なところだし。

でも、私は今したい。私にとっては大事な事だから、今すぐ知りたい。新藤さんと何かあったのか、あるいはなかったのかを……


私は新藤さんの横顔に自分の顔を近付け、更に爪先立ちになって新藤さんの耳元に口を寄せた。そして、


「続きを教えてください」


小声でそう囁くと、新藤さんは驚いたみたいで、ビクッとして私を見た。

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