ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
会社で課長から「ちょっと話そうか?」と言われ、私達は通路脇のミーティングスペースで向かい合わせに座っている。


「昨夜は、あの後どこかへ行ったのかい?」


課長はそう切り出した。まさか、昨夜の事を尋問するつもりでは……?


「二次会の後ですか?」

「うん」

「い、行きませんよ。家に帰りました」


私は少し胸を張り気味にしてそう答えた。昨日とブラウスの色が違う事に、課長は気付いているかしら。つまり、家に帰った証。もちろん嘘なんだけども。

課長って、あまり他人の服装に頓着してなさそうだから、アピールしても無駄かなあ、なんて思っていたけど、


「そうか」


あっさり信じてくれたみたい。


「ところで、例の時間外手当の件なんだけどね……」


課長が困ったような顔でそう言った。どうやら昨夜の事ではなく、こっちの話が本題らしく、私はホッと胸を撫で下ろした。

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