ママと呼ばれたい ～素敵上司の悲しすぎる過去～

「目的ですか？ えっと……」


何だっけ？
新藤さんは何かを言ってたと思うんだけど……ああ、そうか。


「確か、仕事とプライベートのバランスを取ってほしい、って言ってたと思います。つまり、早く帰ってその分趣味を楽しんだり、家族と団欒したり……」

「本当にそう言ったのかい？ 元、“ミスター日電”が？」

「はい、言ってました」

「うーん、そうかあ。という事は、あの噂は本当だったのかな……」


後半は小さく呟くように課長は言ったけど、私の耳はしっかりとそれを聞き取っていた。


「どんな噂ですか？」


私は思わず体を前に乗り出した。

課長は、前にも新藤さんの噂についてほのめかした事があった。でも、その時は私が新藤さんに対して誤った先入観を持ってはいけない、という事で教えてもらえなかった。

私もその時は無理に聞きたいとは思わなかったけど、今は違う。もう先入観云々は関係ない。新藤さんに関する情報なら、何でも手に入れたい、という心境だ。