ママと呼ばれたい ～素敵上司の悲しすぎる過去～

「な、なんで？」

「だってさ、あまり男の事を知らないみたいだから……」

「ん……実はそうなのよ」


恭子の言う通りで、私にはあまり恋愛の経験がない。と言っても処女ではないし、多少の経験はある。素敵な男性と出会いさえすれば、いつでも恋をしたい気持ちはあるのだけど、なかなかそんな男性に巡りあえないのと、仕事で疲れちゃって、積極的に恋の相手を探そうという気力がなかったのだ。


そんな私だけど、今は新藤さんに心を惹かれている。一目見た時から彼にときめいてしまった。こんな気持ち、いったい何年ぶりだろう。


「とにかく、新藤さんっていい人みたいじゃない？ もちろん独身なんでしょ？」

「う、うん。一応はね」

「一応って、どういう事なの？」


来た。ここが問題なのよね……。新藤さんの事情を知ったら、恭子は何て言うかしら……


「それがね……」


私は恭子に新藤さんの事情を説明した。つまり、新藤さんは結婚していたけど、奥さんは亡くなってしまっていて、自殺したという噂がある事。そして、今は娘のまみちゃんと二人で暮らしていて、夜は託児所にまみちゃんを迎えに行かなければならず、そのために定時で帰るのだという事を……