ママと呼ばれたい ～素敵上司の悲しすぎる過去～

「そうなんだ……」


私の話を聞き終えると、恭子はそう言ったきり黙り込んだ。その表情は深刻そうと言うか難しそうと言うか、いずれにしても明るくないのは確かで、ちょっと私の予想外だ。


「恭子、どう思う？」

「うん……。はっきり言って、やめた方がいいと思う」

「え？」


まさか恭子からそんな事を言われるとは思ってなかったから、私は唖然としてしまった。


「どうして？ 彼が初婚じゃないから？ 子持ちだから？」

「ん……そういう事もだけど、莉那はこういう格言があるの知らないかなあ？」

「格言？」

「そう。“死に別れには嫁ぐべからず”、だったかな。要するに同じ再婚でも、相手と生き別れならいいけど、死に別れだと苦労するって事よ」

「ああ……」


そういう話を私も聞いた事があるような気がする。


「死んだ人がライバルじゃ、いくら頑張っても敵わないとか言うでしょ？ そうじゃなくても、何かと死んだ人の影がチラついて大変らしいわよ？」

「確かに、そういうものかもしれないわね？」

「ま、その人次第だとは思うけどね。出来ればやめておいた方がよくない？」


全く恭子の言う通りだとは思う。でもね……