ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
「で、何か作戦はあるわけ?」


食後のコーヒーを一口すすると、恭子が唐突にそう聞いてきた。


「作戦って、新藤さんの件?」

「もちろんよ。例えばクリスマスに何か仕掛けるとか?」


クリスマスかあ。そう言えば、あと一ヶ月足らずでクリスマス、そしてお正月だわね。でも……


「ううん、それまで待ってられないわ」


というのが私の偽らざる気持ち。


「と言うと?」

「実はこのブラウス、新藤さんの亡くなった奥様のをお借りしたのよ?」


と言って、私は今着ている白のブラウスの襟元を指で摘まんで見せた。


「へえー、そうなんだあ。それで?」

「私のブラウスは、奥様の部屋に忘れてきたの。わざと」

「ふーん、どうして?」

「わからないかなあ。それを取りに行くのを口実に、また新藤さんの家にお邪魔する、という作戦よ。彼は持って来ようかって言ったけど、それはお断わりしたの」

「なるほどね。やるわね……」

「明日の帰りに行くって言ってあるんだ」

「明日? 今日じゃなくて?」

「そう。だって、明日は金曜でしょ? 準備して行きたいし」

「準備って?」

「決まってるでしょ? お泊まりのよ」


と私が言ったら、恭子は「あらま」と言って驚いた顔をした。


「あんた、本気なのね?」

「もちろん本気よ?」

< 75 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop