ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
その日の夜、そろそろ寝ようかなと思っていると、誰かがコンコンと部屋のドアをノックした。


「莉那、ちょっといいかしら?」


母だった。すぐに「どうぞ」と応えると、ピンクのガウンを纏った母が私の部屋に入って来た。

母は50歳を過ぎているけど、見た目はまだ四十代に見えるし、何より気が若い。一人っ子の私にとって、母は母であるだけでなく、姉のような存在だ。



「あなたと少しだけ話をしたいのだけど、いいかしら?」

「い、いいわよ」


平然と答えるつもりが、つい噛んでしまった。それは、母から昨夜の事を追求されたらどうしよう、という心の動揺のせいだ。


母はゆったりした動作で2人掛けのソファーに座り、私はデスクの前の椅子に腰掛けようとしたのだけど、


「ここにいらっしゃいよ?」


と言われ、母の隣に腰を下ろした。


「昨夜は恭子ちゃんのお宅に泊まらせていただいたの?」


やっぱりかあ……

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