ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
「ご立腹って事は……」
「じゃあ、ご不満ってところかな?」
「何かあったの、莉那ちゃん?」
私を気安く“莉那ちゃん”と呼んだのは、私より10歳ぐらい上の男性の佐藤さん。名前で呼ぶのは止めてほしいと何度も言ったのに言う事を聞いてくれず、今ではもう諦めている。ちなみに課長もだけど妻帯者だ。
「別に何かがあったわけじゃないです」
この大根、味がよく染みてて美味しい……。ビールは一杯だけにして冷酒にしちゃおうっと。
「楠君はね、新しい部長にご不満なんだよ」
課長がすぐにそうバラした。どうやら課長は新藤さんを今夜の話題にしたいらしい。もちろん私に異論はないけども。
「ああ、そういう事? “私は残業をしません”なんて言っちゃってさ、呆れたね。そんなもん、何も宣言する事ないよな? 定時でもなんでも、好きな時に黙って帰りゃいいのによ」
と、すかさず佐藤さんが、たぶんみんなも思ったであろう事を口にすれば、
「きっと可愛い奥さんが家で待ってるんじゃない?」
と続けて言ったのは私より4つ先輩の渡辺祥子さんで、ちなみに独身。
二人とも“ずれた”事を言ってるな、問題の本質はそこじゃないのに、と私は思ったけども、渡辺さんの発言には別の意味でちょっと、と言うよりかなり、私は興味を惹かれた。そこで、
「課長、新藤さんって結婚してるんですか?」
と、新藤さんの正体を知っている課長に聞いてみた。
「じゃあ、ご不満ってところかな?」
「何かあったの、莉那ちゃん?」
私を気安く“莉那ちゃん”と呼んだのは、私より10歳ぐらい上の男性の佐藤さん。名前で呼ぶのは止めてほしいと何度も言ったのに言う事を聞いてくれず、今ではもう諦めている。ちなみに課長もだけど妻帯者だ。
「別に何かがあったわけじゃないです」
この大根、味がよく染みてて美味しい……。ビールは一杯だけにして冷酒にしちゃおうっと。
「楠君はね、新しい部長にご不満なんだよ」
課長がすぐにそうバラした。どうやら課長は新藤さんを今夜の話題にしたいらしい。もちろん私に異論はないけども。
「ああ、そういう事? “私は残業をしません”なんて言っちゃってさ、呆れたね。そんなもん、何も宣言する事ないよな? 定時でもなんでも、好きな時に黙って帰りゃいいのによ」
と、すかさず佐藤さんが、たぶんみんなも思ったであろう事を口にすれば、
「きっと可愛い奥さんが家で待ってるんじゃない?」
と続けて言ったのは私より4つ先輩の渡辺祥子さんで、ちなみに独身。
二人とも“ずれた”事を言ってるな、問題の本質はそこじゃないのに、と私は思ったけども、渡辺さんの発言には別の意味でちょっと、と言うよりかなり、私は興味を惹かれた。そこで、
「課長、新藤さんって結婚してるんですか?」
と、新藤さんの正体を知っている課長に聞いてみた。