ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
デートではないけれど……
「そ、それは……」

「忘れ物を取りに来たんですよ」


私が口ごもっていると、すかさず新藤さんが助け舟を出してくれた。


「そうですか。外はだいぶ冷え込んで来ましたから、あまり遅くならない方が良さそうですよ?」

「は、はい……」


つまり帰れって事よね。私、この人に完全に嫌われてる?


「では、私はこれで……」


必然的に私はそう言わざるをえなかったけど、内心は新藤さんが引き止めてくれるといいなあ、なんて一縷の望みを抱いていた。ところが、


「そうかい? じゃあ、駅まで送って行くよ」


と言われてしまった。残念な事に……


「まみちゃん、バイバイ」


諦めてまみちゃんに小さく手を振ると、


「おぷろは?」


まみちゃんに悲しそうな顔をされてしまった。


「ごめん。今度ね?」

「やだ」

「まみ! いい子にしなさい!」


山田美沙さんが突然怒鳴り、まみちゃんはもちろんだけど、私までビクッとしてしまった。


まみちゃんは途端に目を涙で潤ませ、それでも「バイバイ」と言って私に手を振ってくれた。私は、「ごめんね?」としか言ってあげられなかった。

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