ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
もう、新藤さんったら、紛らわしい……


私は頭に来るやら、がっかりするやら、そんな悶々とした気持ちのまま家に帰った。


「ただいま……」

「あら。帰って来たのね?」


さほど遅い時刻ではないので、リビングに顔を出すと母も父も起きていた。


「なんだ? 莉那は泊まる予定だったのか?」


すかさず母の言葉に父が食いついて来た。今夜の事は、もちろん父には言ってないわけで、母の不用意な言葉に私はちょっとイラっとしてしまった。


「予定ってわけではないわ。“泊まるかも”って言ったはずでしょ?」

「そうだったわね? ごめんなさい」


つい強い調子で私は言ったのだけど、母は悪びれもせず、むしろ笑顔を浮かべていた。


「おいおい、何の話だ? 俺をのけ者にしないでくれよ……」

「大した話じゃないの。会社の帰りにお友達のお宅にお邪魔した、ってだけよ」

「そうか。もちろん女の友達だよな?」

「も、もちろんよ」


いけない。噛んじゃった。母はというと、可笑しそうに笑ってる。他人事だと思って、もう……


「ご飯は食べたから、お風呂に入って寝るわ。おやすみなさい」


父に追求されたら困るので、私は早々にリビングを後にした。

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