大好きだったあいつ


手を振りながら携帯を下ろす望さんに、ほっとする。


「えっ?
まさか、ずっと後ろに居たってこと?!」


「あっはは、どうやらそうみたい。
面白いよね。」


楽しそうに笑う彼に、つられて笑う。



「何でお互い気付かないかな。
一生懸命改札口見てたー!」


「俺もだよ。
同じ電車に乗ってたのかもね。」


あぁ、出だしからこんな笑顔が見れるなんて好調じゃないの?


「じゃあ、行こうか。
どっか行きたいところある?」


「うーんと…」


この質問に、あたしはいつもあの男を思い出す。



”どこ行きたい?何食いたい?の質問に、なんでもいい。は言わない方がいいな”


確かに、この意見は間違いない。


「…とりあえず、どっかカフェでも行きません?
お話ししましょうよ。」


いいよ、とサラッと受け入れてスタスタ歩き出した彼に、やっぱりリードされる方が向いてるタイプなのかな。と感じた。





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