大好きだったあいつ


洋平さんの顔をゆっくり見上げると、あたしを睨みつけるように見下ろす彼と目が合った。


黙ったあたしに、大きくため息を吐いた。


「お前、まだ俺が唯に未練あると思ってんだろ。」


「………………。」


「ったく。
あいつに今更好きとか思わねーっつの。
この恋愛ボケが。」


じゃあ、あの優しい顔は何なの?


それでも黙って俯くあたしに、洋平さんが顔を覗き込ませた。


「未練があんのは誰かさんじゃねーの。
泣きそうな顔して。」


「泣きそうな顔なんてしてない。
誰かさんって誰よ。」


鋭く目を尖らせる。


「………素直じゃねーな。
可愛くねぇ。」


その言葉にあたしは持っていた鞄で思い切り背中を殴った。








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