大好きだったあいつ
あからさまに嫌そうな顔をして、そそくさと離れようと歩き出すと、おい。と腕を掴まれた。
「ここ空いてますけど。」
「あ、結構です〜。」
再び前進したが、思い切り腕を更に引き寄せられた。
「何かの縁だろ。
ここにいろよ。」
縁なんて御免だ!
しかし逆らえずに仕方なく彼の前に立つ。
「…どうなった?
あの2人。」
そう言ってウィスキーをグイッと飲んだ彼にムスッとした表情で、戻りました。と言った。
「ははっ、やっぱりか。」
コツン、と置いたグラスを見つめながら、気になっていた理由を尋ねた。
「どうして2人がやり直すって分かったの?」
一瞬あたしの目を見て、彼もグラスに視線を戻した。
「…別に分かったって程じゃないけどな。
ただ、あの女を見た時に別れを切り出せるサバサバした女じゃないって感じたのと、あんたがグダグダあんなくだらない芝居させられるぐらいだから、別れる気ねーんだろうなっと思ったんだよ。」