大好きだったあいつ
そんなあたしを可笑しそうに横でニヤニヤ見つめる洋平さんにイラっとする。
「あたし、もう会社戻るから。」
ガサガサと鞄を弄り、財布を取り出すと洋平さんが財布をしまう様に手で押さえた。
「いらないから。」
「や、いいです。」
「もう払ってある。」
え!?
シレッと言う彼に、全員が同じ顔をした。
「え、どういう事…?」
「だから、先に会計済ましたって事。」
「えっ、いいんすか!?」
一郎もアワアワと落ち着きなくなった。
「ランチぐらい別にいい。
俺会計でごちゃごちゃすんの、嫌いなんだよ。」
うぉぉ。
かっこいいな、おい。
「…じゃあ…ご馳走様です。」
ここは素直にご馳走になっておこう。
「おー。」
少し笑って手を挙げる洋平さんに、不覚にも女心を鷲掴みにされた。
反則でしょ。
スマート過ぎてびっくりする。
広瀬洋平を舐めていた、と実感したあたしがいたのであった。