スイーツ男子、佐藤くん
俺が現れたことに驚いたのか男達は目を見開いている。サチちゃんはカタカタと震えているみたいだった。俺は着ていた薄手のパーカーをサチちゃんに羽織らせて、「目、閉じててね。」と言った。

俺は振り返り、激怒している男三人を見た。怒りで自分を失っているのかは知らないけれど、いい度胸だと思う。

伊織にも、姉さんにも教えてない俺の秘密。実は俺は中学生時代をアメリカで過ごしていた。母さんと共にアメリカへ向かった俺だけれど、そこではいろいろな苦悩があった。

日本人。それだけで周りから文句や罵倒を言われた。相手は俺が英語を分かっていない、と思っていたのか好き勝手言っていた。比較的温厚な方だと言われる俺だけれども、さすがに堪忍袋の尾が切れた。

罵倒を繰り返した奴らを一夜にして全滅させたのだ。夜な夜な近くの廃工場に匿名で呼び出し、集まった30人を片付けた。母さんはきっとそんな俺に気付いていたと思うけれど、文句は言わなかった。

そこから道を外すのは早かった。悪い奴らとつるむ気はなかったけれど、いつの間にか周りを取り巻くのは不良ばかりになっていた。若さ故の過ちか、いろいろやらかした覚えがある。もちろん、逮捕なんてされるレベルではないけれど。

さすがに俺もやっていることに気付いたのか、アメリカからは逃げることにした。今思えばあんなこと、黒歴史だ。それを消すために俺は日本へと帰ってきた。

つまり、俺はなんと言ったらいいか分からないけど、元不良、現パティシエ志望の少年なのだ。

もちろん、誰にも言わないけれど。
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