スイーツ男子、佐藤くん
しかも相手は佐藤くん。
あの唇の感触がまだ残っていて、ゆっくりと人差し指で輪郭をなぞった。心臓の鼓動はまだ収まりそうになくて、むしろさらに早くなっているようにも感じた。

浴衣を整え、佐藤くんの前に行くことが怖かった。彼がどんな顔をしているのか見るのが怖かった。今まで良い友好関係を築けていたはずなのに、私にあんなことが怒るから、気まずくなっちゃうなんて。楽しみだったはずのお祭りがちょっとだけ心の重圧となり、鎖のように絡みつく。

大きく深呼吸をして、心を無理やり落ち着かせる。大丈夫、大丈夫。自分に言い聞かせた。私は伊織くんのおまじないを軽く触って、佐藤くんの元へと歩き出した。
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