スイーツ男子、佐藤くん
「あ、サチちゃんおかえりなさい。」

と佐藤くんは言う。彼の表情は見えなかった。何故かと言うと、彼はいつの間にやら手に入れて来た子供向け番組のお面をしていたからだ。

佐藤くんはさっきのことがまるでなかったかのように言った。それが私に気を使っているみたいで、なんだかむず痒い気持ちになる。

「行こう、サチちゃん。花火が始まっちゃうよ。」

「あ、う、うん…。」

歩き出す佐藤くんにつられ、私も歩く。
鼻緒が擦れてかなり痛い。絆創膏くらい持ってこればよかったな、と後悔する。

「サチちゃん、」

と佐藤くんがいきなり振り向くので、私は思わす彼の胸に激突した。

「はぐれちゃうから、…はい。」

そう言って差し出して来たのは彼の切り傷や火傷の多い、大きな手だった。

私は何も言わずその手をとった。
今日で今までの関係が、終わってしまいそうな。そんな気がしたから。
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