スイーツ男子、佐藤くん
お祭りはやはり人が多く、その多さに思わず人酔いしてしまいそうになった。私はと言うと、前を歩く佐藤くんの背をぼんやりと見つめるだけ。何やってるんだろ、私。カツカツと下駄が鳴る。がんばって隠そうとしているけれど、私の足はもう限界だ。でも、これ以上佐藤くんに迷惑をかけるわけにも行かなくて、黙ることしか出来なかった。

「…サチちゃん?」

「な、なに?」

佐藤くんが歩くのをやめ、振り向いた。

「歩くの辛そうだけど、大丈夫?」

「だ、大丈夫だよ。ほら!」

そう言って歩き出した瞬間、私の下駄の鼻緒が切れた。私は思わず絶望的な顔になった。
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