スイーツ男子、佐藤くん
最悪最低なタイミングだった。彼に迷惑をかけまいと思った矢先にこれだ。あぁもう、浴衣をちゃんと見てもらいたかったのに、私って本当バカ。

「…切れちゃったみたいだね。仕方ないけど…。」

佐藤くんは人気の少ないベンチへと私を移動させた。まさか持ち上げられるとは、なんてびっくりする余裕もなかった。

「足も擦れてるし…言ってくれれば、良かったのに。」

「…ごめん。」

「怒ってるわけじゃないよ、僕は。でもこれじゃたダメそうだし…仕方ない、帰ろうか。」

と言うと佐藤くんは私の前で腰を屈めて背を私に見せた。状況がよく分からない。

「どうせ歩けないでしょ?大丈夫、ちゃんと旅館まで連れてってあげるから、乗って?」

私には拒否権はないみたいで、私は恐る恐る彼の広い背中に乗った。
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