スイーツ男子、佐藤くん
ゆらゆらと背中で揺られながら、私は眠りそうな目をこする。電車の中やバスに揺られていると眠ってしまう私は、ここでも一緒みたいで、うとうととしていた。

海の波の音が聞こえた。佐藤くんの足が砂浜を踏む音。旅館と海は近いから、きっともう少し。

「サチちゃん?眠いの?」

「…うん。ねむい、なぁ…。」

「そっか、寝てもいいよ?」

「ねない…ねちゃだめだから…。」

なんだか呂律がまわらなくなってきた。自分がなにを言っているのか、本人ですら分かっていない。

「なんで?」

「さとうくん、に、これいじょう、めいわくかけられないもん…だから…わたし、ねちゃだめ…。」

首がうつらうつらとなってきた。本格的にこれは寝ちゃいそう。でもだめだめ、佐藤くんは重い私を背負って歩いているんだから。

「僕は迷惑じゃないよ、サチちゃん。安心して寝ててね。それとね、サチちゃん。僕、さっきのこと………」

佐藤くんが最後に言った言葉は、夢の世界に旅立った私には聞こえていなかった。
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