スイーツ男子、佐藤くん
目覚めた時にはもう私は旅館に居た。手探りでスマホを探し時間を確認すると、まだまだ早い5:00だった。眠ってしまおうか、そう思い布団になだれ込んでも、一向に眠気は来なかった。仕方ない。私はいつの間にか着替えて居たらしい就寝用の浴衣を脱ぎ、軽い服装へと着替えた。そして散歩に行って来ます、という書き置きを残し、部屋を出た。

朝の海はまだ涼しく、人の姿は見えない。孤独感だけが漂っていた。

昨日のことはまだ気持ちの整理がついていなくて、自分でも何が何だか分かっていない。それでも、佐藤くんにキスされて、自分が嫌じゃなかったことだけは覚えている。

私、なんなんだろう。

波打つ心を抑えながら砂浜を歩くと、前方から足音が聞こえる。ふと前を向くと、そこにいたのは志優先輩だった。

「…なんでこんな早い時間に…?」

「それ、私のセリフです…。先輩こそ、どうして…。」

「いや、外を見ていたらお前の姿が見えたんでな。様子を見に来ただけだ。昨日のことでいろいろ心配だったからな。」

「昨日…?」

自分の覚えていない昨日の夜のことで、思わず首を傾げる。先輩は覚えていないのか、と小さく呟いた。

「昨日の夜、俺は旅館に居たんだがな、佐藤がお前を背負って帰って来たんだ。お前はまぁ…爆睡中だったが。その後すぐに飛んできた千代子にお前の世話を任せたんだがな。それと、諸々は佐藤に事情を聞いた。」

「ご、ご迷惑をおかけしました…。」


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