スイーツ男子、佐藤くん
どんよりと曇る空。せわしなく動く私達。先輩と私は道具の後片付けをする真っ最中だった。今は時間との勝負。数が多くて大変だけれど、どうにかして志優先輩の旅館まで戻らなくてはならない。

「サチちゃん、それこっちよ。」

「あぁ!す、すみません…。」

考え事ばかりしていたからか、間違えてクーラーボックスにお玉やボウルを入れてしまうところだった。おそらく佐藤先輩の一声がなければ、気づかずやってしまっていただろう。

「ふふ、慶太のことでも考えていたの?」

「へ!?」

思わず大きな声を出すと、なんだなんだと伊織くんが顔を出した。何でもないよ、と告げると伊織くんは不服そうな顔で持ち場に戻って行った。絶対伊織くん、話の内容に気付いてる…!

「ごめんなさいね、驚かすつもりは無かったのよ。」

「そ、そうですか…。」

「慶太のこと、好きなら早めにゲットしておかないと…他の女の子にガブっと取られちゃうわよ。」

きらりん、と効果音が付きそうなウインクをする佐藤先輩。私は夏休み前のことを思い出した。岡野まほらという可愛い女の子。一年生で、小動物みたいでちっちゃな子。あの子は確か、佐藤くんに告白して、それでー…。

「…あの、佐藤先輩。」

「なにかしら。」

「もしかしたら、いや、間違っているかもしれないんですけど…。」

私はいざ言おうとすると勿体ぶってしまって、なかなか言い出せない。佐藤先輩はゆっくりでいいのよ、と微笑み私の言葉を待っている。私はとびっきり小さな声で、先輩の耳元に囁いた。

「…もしかしたら、私、佐藤くんのことー」

"好きなのかも、しれません。"

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