スイーツ男子、佐藤くん

やっと冷えた頬を軽く叩き私も作業を始めた。先輩が大方やってくれたおかげか、私の出番は大して無かった。佐藤先輩はきゅ、と荷物をまとめると、私達を呼び集めた。

「終わった、かしら？」

全員は無言で首を縦に振る。

「ならいいわ。…って、雨！？降り出したわね…ごめんね、傘、四つしかないの。」

海の家から外を見ると、大粒の雨が降り出した。通り雨か、それとも普通の雨かは分からないけれど、今のうちに帰らないと砂浜がぐしゃぐしゃになって汚れてしまう。荷物は軽くまとめてあるけれど、急がなくちゃならない。

傘は四つ。とりあえず先輩方に一本ずつ。で、残りは一本…だから、申し訳ないけれど、伊織くんと佐藤くんで一緒に使ってもらおう。で、私は走ればいいかなぁ。

という考えを見透かしたのか、佐藤先輩は口を開いた。

「あぁ、傘だけど、悪いけれど荷物は私と志優が持つから、真広は伊織、慶太はサチちゃんと一緒に使ってくれる？ごめんなさいね。」

先輩のその笑顔は悪魔のような天使の微笑みだった。つまり、その、相合傘をしていけということですか。