スイーツ男子、佐藤くん
「…沙智?」

「ごご、ごめん!なんでもないよ!わ、私たちも行こう?ね?」

「…うん。」

私たちも靴を履き替えて、学校を出る。
心の中は切り替えたつもりでもどこか濁っていて、私は今すぐ綺麗な水で洗い流したい気分だった。

「よし、何処行こう!」

「…もしかしてノープラン?」

「うん。」

理玖はしれっと言いのけた。
私ははぁ、とため息をつくと理玖に「理玖の好きなところでいいよ」と伝えた。

「じゃあゲーセン行こう!」

「はーい!」

私と理玖は学校から一番近いゲーセンに向かった。周りにはちらほら同じ制服の子がいる。

「とりあえずUFOキャッチャーかなぁ…。」

「あ、定番だしね。どれ取るつもり?」

「俺大抵は取れるから…沙智、選んでよ!」

「え?いいの?」

おそるおそる尋ねると理玖はもちろん!と笑ってくれた。
それじゃあ、と思い店内を見渡すと目に入ったのはケーキを持ったウサギのぬいぐるみ。理玖は私の視線に気付いたのか、「これ?」と聞いてきた。

「う、うん。可愛いし…。」

「よし、じゃあやってみるよ!」

理玖は財布から百円玉を二枚入れるとじーっとぬいぐるみを観察してからアームを動かした。ガッとぬいぐるみの首をアームが掴み、そのままぬいぐるみを引きずる。向かう先は景品が落ちる穴。バランスを崩すことなく引きずられたそれは、真っ逆さまに落ちて行った。

「す、すごいよ理玖!」

「だろ?んじゃ、はい!」

理玖はゲットしたぬいぐるみを私に手渡して来た。

「え?ど、どういうこと?持っていればいいの?」

「違うって。それ、沙智にあげる。今日付き合ってくれたお礼。それにこんな可愛いの、男の部屋に置いてたら似合わないじゃん?」

「じゃあ羽実ちゃんにあげれば…。」

「あぁ、羽実にはもう十分あげた。多分羽実の部屋、もうぬいぐるみだらけだから。それに俺が沙智にあげたいんだけど…だめ?」

あぁもう、そう言われると断れないよ。私はぬいぐるみをぎゅ、と抱きしめ、「理玖、ありがとう。」とお礼を言った。
理玖の表情も満足げだった。
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