スイーツ男子、佐藤くん
「…サチちゃん。」

今、一番聞きたくない声が聞こえた。

私はドアの横をすりぬけて逃げようと走り出した。しかしその逃亡も虚しく、私は後ろの壁に縫い付けられた。

「佐藤、くん…。」

「…サチちゃん。」

佐藤くんの声はいつも見たいに余裕があるわけじゃなくて、気のせいかもしれないけれど、震えていた。

「…サチちゃん、なんで避けてたの。」

「…そ、それは…。」

じっ、と真剣な眼差しで見てくる佐藤くんの視線から逃れようと、私は目を逸らした。

「…こっち見てよ、サチちゃん。」

「っ…。」

魔法を掛けられたみたいに、私は佐藤くんの方を向くしかなかった。

「…サチちゃん、俺のこと嫌いになった?」

ぎゅ、と私の手首を掴む力が強まった。
< 31 / 148 >

この作品をシェア

pagetop