スイーツ男子、佐藤くん
スニーカーの踏まれた踵を直しながら玄関を出る。一気に照り込んでくる日差しで思わず目が眩んでしまった。

「いい?んじゃ、行くよ!」

エプロンを外した蛍が楽しそうに言った。そういえば昔から、蛍はバスケが好きだった。

近くのストリートバスケが出来る場所は休日だというのに人はいなかった。

「よし、姉ちゃん。1on1でいい?」

「もちろん!負けないんだから!」

「姉ちゃん運動神経良いからなぁ。…でも、俺も負けない、よっと!」

チェンジオブペースをされ、抜かれてしまった。私はくるりと向きを変え、蛍のドリブルしていたボールを手のひらで叩きつけた。

ジンジンと手が痛む。私の弾き飛ばしたボールは蛍の手から離れ、飛んで行った。

「…姉ちゃん凶暴過ぎだろ。」

「勝負には負けたくないの!たとえ弟が相手でもね!」

悔しそうな顔をする蛍を横目に私は飛んで行ったボールを回収した。結構飛ばせたかも…。

「ねえ、姉ちゃん最近帰り遅くない?前は俺の方が早かったのに、最近姉ちゃんの方が遅いよね。」

「え、そ、それは…ううん、確かに。」

最近は調理室でギリギリまでやってから帰っているから…確かに遅いかも。自重しなきゃ…。

「もしかして、男でも出来た?」

「え…?な、何言ってるの蛍!そんなわけないじゃない!」

「ふうん…ならいいんじゃないの?」

腑に落ちない態度で無理やり納得させた。そう、蛍はただの運動の出来るイケメンではなく、自他ともに認めるシスコンなのだ。
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