虹色コンチェルト
音羽の疑問には気付かないまま、
琴子が問い掛けてくる。
「音羽の専攻は?やっぱりフルート?」
「……」
「音羽?」
「まだ、決めてないの…」
「え?でも、入学する時に専攻希望書いたよね?」
「う、うん。その時は……歌、って」
一応は書いた。
専攻は途中でも変更はできる。
だから一番長くやってきた歌を希望欄に書いたのだが、
はっきりした結論は出せていない。
ポツリと小さく零した言葉を、
琴子はしっかりと拾っていた。
「音羽が、歌を?ソプラノだよね?音羽の声だったら」
「……うん」
「凄いじゃん!」
「…凄い?」
「うん!まぁ全然想像はつかないけど…。ほら、音羽って喋る時可愛いくらいに声小さいでしょ?」
チクッ。
少しだけ、胸が痛んだ。