虹色コンチェルト

 音羽の疑問には気付かないまま、

琴子が問い掛けてくる。


「音羽の専攻は?やっぱりフルート?」

「……」

「音羽?」

「まだ、決めてないの…」

「え?でも、入学する時に専攻希望書いたよね?」

「う、うん。その時は……歌、って」


 一応は書いた。

 専攻は途中でも変更はできる。

 だから一番長くやってきた歌を希望欄に書いたのだが、

はっきりした結論は出せていない。

 ポツリと小さく零した言葉を、

琴子はしっかりと拾っていた。


「音羽が、歌を?ソプラノだよね?音羽の声だったら」

「……うん」

「凄いじゃん!」

「…凄い?」

「うん!まぁ全然想像はつかないけど…。ほら、音羽って喋る時可愛いくらいに声小さいでしょ?」


 チクッ。

 少しだけ、胸が痛んだ。


< 14 / 38 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop