虹色コンチェルト
髪を軽く引っ張られながら、
母親が用意してくれたサンドイッチに齧り付く。
――ピッ。
テレビの電源を入れて、チャンネルを変えて行く。
「あ、」
「ん?……あぁ、コイツか…」
音羽の声に、錬次が肩を竦めた。
「お前、コイツ好きだよなー」
「うん。凄く綺麗な音…だから」
テレビに映るのは、キラキラ輝くフルートを、
優しい表情で奏でる一人の男の子。
「俺たちより1つ上なんだよな。海外公演の真っ最中だから、今は休学中か」
「うん……だから、会えないの」
肩を落とし、もきゅもきゅとサンドイッチを頬張る。
天才フルーティストの、綾瀬朔真。
彼に憧れて、音楽科のある同じ高校を受験した。
フルートを始めたのは中学2年の時。
それまではずっと、歌を歌ってきた。
自分はきっと、
高校に上がっても歌だけを続けていくんだと思っていた。
でも、今は…
(フルートも、やりたい…)