虹色コンチェルト
「音羽」
「…?」
「学校ではソレ言うなよ。絶対に」
「……うん、分かった」
曇っていた錬次の顔が少しだけ晴れて、
こっちを見下ろしてきた。
「音楽科はそっちの校舎だろ?帰り、ココで待ち合わせな」
「あ…、うん。またね」
背を向けて、軽く片手を上げながら離れて行く錬次を、ぼんやり見つめた。
(うん。やっぱり錬ちゃん……背、伸びた)
音羽はくるんと回れ右をして、音楽科の校舎へ向かった。
1-Ⅱの教室。
中を覗くと、みんな緊張しているのか、
思ったよりも静かな空気が漂っていた。
コクリ…。
音羽は生唾を呑み込んで、そろそろっと中へ…。
中学からの顔見知りは、いない。
とりあえず自分の席について、窓の外へ視線を送る。
(……あ)
直ぐ下に、50メートルのプールが見えた。