ギャルとメガブス
私はヒールの靴を玄関に放るように脱ぎ散らかして、部屋の中へ入った。

テレビ台の棚の引き出しを開き、中を引っ掻き回す。


――あった。


封筒の中から、紙を取り出す。

若干日に褪せた、くしゃくしゃの紙。

あの日の五線譜。


私は五線譜を見つめて、暫くの間迷っていた。

馬鹿馬鹿しいと鼻で笑う自分と、いや、でも……と不安に怯える自分が半分半分、心の中で戦っていた。

富士見が丘へ向かうこと自体、負けな気がした。


だって、子供じゃあるまいし。

幽霊との約束なんて、信じるっていうの?

そんな、現実的でないことを、誰が信じるって言うの?
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