ギャルとメガブス
私は結局、五線譜を鞄の中に忍ばせて、再び我が家を後にした。

ヒールの靴を、普段あまり履かないぺたんこのサンダルに履き替えて、これまた普段ほとんど乗らないスクーターに跨った。


もう、終電十数分前。

今から行ったら、確実に電車がなくなってしまう。


夜の井の頭通りを、ひんやりとした夜風を受けてひた走りながらも、私はずっと嫌なドキドキが止まらなかった。


どうか……どうか悪い夢であって欲しい。

俊くんの幽霊も、コーイチの浮気も、

いや、むしろコーイチという彼氏の存在すら、現実でなくても構わない。
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