ギャルとメガブス
「ねえねえ、俊くん。俊くんは、私と会ってる時以外の時間って、何しているの?」


音楽室に忍び込みながら、私は尋ねた。

俊くんが振り返る。


「え? ずっと、あそこの踏み切りにいるよ」

「踏み切りのところに?」

「うん。それで、眺めてる」

「何を?」

「通り過ぎる人とか、車とか」

「一日中?」

俊くんは頷く。

「飽きないの?」

「時々、知ってる人が通るよ。

知らない人も、何度も通ってれば顔を覚えるし」

「でも、相手からは見えないんでしょう?」

「たまーに、ね、見える人もいるよ。

別に、仲良くなったりしないけど。

だって皆、気持ち悪そうな顔して、足早に行っちゃう」
< 137 / 215 >

この作品をシェア

pagetop