ギャルとメガブス
「……だろうね。踏み切り以外には、何処に行くの?」


俊くんはちょっと考え込んだ。


「この辺りなら、歩き回ったりするよ。

時々家に帰って、パパやママに会いに行く。

でも……寂しくなるから、あんまり行かない」


俊くんはピアノの蓋を開きながら、小声で呟いた。

私は、悪いことを尋ねてしまったかな、と少し後悔した。


「電車に乗ったりはしないの?

幽霊なら、誰にも見えないし、何処にでも行けるでしょ?

映画だって見放題!」


場の空気を盛り上げようと、私はおちゃらけた調子で言ったけれど、俊くんの表情は一向に明るくならない。
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